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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第19章 死なせない


琴音が目覚めると、自室にいた。ちゃんと布団で寝ていたので、義勇が寝かせてくれたのだとわかる。隣には人形も置かれていた。

まだ頭がぼんやりとしているが、隊服のままだったのでむくりと身体を起こす。
寝ていたのは数刻のようで、時刻は昼過ぎくらいだった。仕事に行ったのか、義勇は居なかった。

風呂に入りたかったので沸かそうと思ったが、既にいい感じに温まっていた。

「琴音さん、起きたのね」
「千代さん!ご無沙汰しております。お風呂ありがとうございました」
「本当にご無沙汰よー。あなたがいない間の冨岡さんのしょんぼりっぷりったらなかったわ」
「そうでしたか……」

「羽織は裏返しで着るし、箪笥に小指ぶつけてうずくまっていたし、お茶と間違えて麺つゆ飲んでむせていたわ」
「そ、それは、重症ですね」
「私も長くここに居させてもらっているけど、こんな冨岡さんは初めてよ」
「そっかぁ」
「忙しいとは思うけど、出来るだけ帰ってきてあげてね」
「はい」
「冨岡さんはもう私の息子みたいなものだから。気難しくて取り扱いは難儀かもしれないけど、よろしくね」
「はい」

琴音は着替えを持って風呂へと向かう。
身体を洗いながら、麺つゆを飲んでむせる義勇を思い浮かべて笑った。

……千代さん、それ多分、私に言っちゃいけないやつだったよ

お風呂上がりでお茶をもらい、遅めのお昼ご飯を食べた。義勇の帰宅予定は夕方頃だそうなので、琴音は千代と一緒に晩御飯を作る。
献立が鮭大根ではなかったので、根菜の煮物を作る琴音。相変わらず義勇の好きな味はわからないため、自分の好きな味で調理をした。

義勇の帰宅までの間に、煉獄家へ顔を出す。
こちらにもしばらく帰れていなかったので状況を報告し、必要な本を数冊手に持って冨岡邸へと戻った。

ご飯を作り終わった千代と交代し、本を読みながら義勇の帰りを待つ。

こんなに心が穏やかになったのは、いつ以来だろう。少しぼんやりとしていると、玄関で音がした。本を閉じて琴音は駆け出す。


「おかえりなさい」


笑顔で出迎えると、義勇も穏やかに笑った。


「おかえり、琴音」


ただいまでしょ、と琴音が突っ込む前に、義勇の腕に抱きしめられた。

義勇は嬉しそうに目を細めていた。


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