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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第19章 死なせない


そこから善逸はどんどん回復していったが、炭治郎と伊之助は眠り続けている。伊之助は何度も心停止をして、目が離せない。

「伊之助くん!負けるな!頑張れ!!」

心臓が止まる度に胸骨圧迫をしながら必死に呼びかける琴音。

「山の王でしょ!王様は負けないの!!子分たちが待ってるよ!!頑張れ!頑張れ!!」

普通ならとっくに死んでるだろうこの身体。
しかし、ちゃんとぎりぎりのところで伊之助は戻ってくる。
彼のこの自然治癒力の高さが希望になっている。

「琴音さん!心拍戻りました!」
「はぁ…よかった。偉いよ、伊之助くん」

琴音たちも諦めずに毎日治療にあたっていた。


炭治郎も食らった毒の影響か、眠り続けたままだ。状態は安定しているのだが、目覚めない。

善逸の話によると、善逸以外の者は鬼から致死量の毒をくらい、それを禰豆子の炎が燃やして解毒したとのこと。善逸は毒を浴びていないため、それを見ていただけだと話した。

毒を扱うしのぶと薬を扱う琴音としては、その毒も解毒も喉から手が出る程欲しい情報ではあるが、どちらも鬼由来のものなのでわからないことだらけだ。二人で頭を抱えながら可能性などを話し合った。


十日もすると、しのぶや琴音にも通常の指令が来るようになり、看護と製薬、研究をしながら鬼殺の隊務をこなしていく。
ただでさえ柱は激務な上に宇髄が抜けた穴を皆で埋めねばならない。負傷した新米隊士のために柱二人を付けることなど出来ないというのが現状だった。

目の回るような忙しい日々の中、琴音としのぶは懸命に看護にあたった。その甲斐あってか、目覚めはしないものの二人の状態は安定方向へと向かった。


蝶屋敷滞在二十日目。
任務終わりで、研究室の机に伏して仮眠をとっていた琴音が目覚めると、傍らにきちっと畳まれた手ぬぐいが置いてあった。水通しされた扇柄の手ぬぐい。義勇が来ていたのだと解る。手ぬぐいの上には懐紙で包まれたいくつかの金平糖。

疲れた心が、ふわっと暖かくなった。
金平糖を一つ口に入れる。甘い味が口に広がった。

ずっと張り詰めていた緊張感が解けていく。


「ありがとう」


義勇の優しさを受け取って、手拭いを握りしめながら琴音は一人呟いた。

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