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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第19章 死なせない


「いってくるね」
「ああ」
「……絶対に死なせない」

琴音は薬を持って玄関へと走る。草履を結ぶ手が震えたが、ぎゅっといつもより固めに縛った。

「ごめん、しばらく帰れないと思う」
「わかった」

「いってきます!!」

琴音の姿があっという間に消えた。
義勇は心配そうな顔をして彼女を見送った。



琴音は人がばたばたと行き交っている騒がしい蝶屋敷に駆け込んだ。

「琴音!感謝します!こちらへ!!」
「しのぶちゃん!詳細見せて!」

廊下を走りながら書類を見る琴音。

「この抗体数値……猛毒浴びてすぐ解毒…ってこと……?一体何が……」
「まだ不明な点が多いのです」
「何種も掛け合わさっているような毒を一気に解毒したってことだよね」
「ええ」
「身体欠損はなし、出血多量、骨折各所……」

二人は炭治郎たちの集中治療室に入る。彼らの痛々しい姿にぐっと眉を潜める琴音。
近寄って観察をした。

「伊之助くんが、一番危ないね」
「ええ」
「この血圧は、ちょっと厳しいな」
「……先程、心拍が止まりまして、復活したところです」
「……………」

琴音は点滴を見上げ、治療内容を把握した。状況が好転していないところをみると、点滴による投薬があまり効いていないということだ。内服はもっと効果が望めない。
おそらく毒を浴びたときに、内臓が損傷していると考えられる。

「しばらく点滴の投薬治療を続けよう。それしか……出来ないもんね」
「はい」
「薬、追加で作ってくるよ」
「お願いします」

自分に出来ることなど多くはない。それでもやれることをやるんだ。またこの子たちがじゃれあって喧嘩する姿を見られるように。

『琴音さん!』
『琴音ちゃぁーん』
『琴音!!』

彼らの元気な声が聞こえた気がした。
琴音は唇を噛んで研究室へと向かった。


その日、琴音は眠らずに薬を作り続けた。


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