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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第18章 お気に入り


家に着くと早速棚を設置する。
棚が入ることで琴音は部屋の模様替えもする。鏡台や箪笥を少し動かしてあれこれと考えている。

位置が決まると、棚の上に白いレースの綺麗なハンカチを敷き、犬の人形を置いた。嬉しそうに笑っている。

「場所ができて良かったな、おこげ」
「………え?な、なんで」
「お前が今朝、呟いた」
「っ、」

ぎょっとした琴音の顔が、みるみる赤くなっていく。どうやらへんちくりんな名前をつけているという自覚はあるようだ。

「あのね!子どもの時に買ってもらったの!だから、あの、その時に付けた名前だからちょっと変なの」

恥ずかしがって顔を赤くする琴音がどうにも可愛くて、義勇は笑いながら彼女をぎゅっと抱きしめた。

「わ、義勇さん」
「お前はどれだけ可愛ければ気が済む」

急に抱きしめられて少し驚いた琴音が、義勇の腕の中で顔を上げた。その唇を優しく塞ぐ義勇。
何度か接吻を繰り返して口を離すと琴音が赤い顔をして笑う。

「紅、ついてるよ?」
「…………」
「あ、こら!手で拭いたら汚れちゃう。じっとしてて」

琴音は懐紙で拭いてやり、そのまま義勇の首に手を回して抱きついた。義勇も琴音の背中に手を回して抱きしめる。

「楽しかったね」
「ああ」

くっつき合って、微笑み合う。
密着していると何やらムズムズとおかしな気分が生まれてくるのを自覚し、義勇は琴音をそっと離した。昨日の今日で抱くわけにはいかない。琴音に無理をさせてしまう。

気分を変えようと懐から手拭いを出して見つめた。

「扇柄は、末広がり。将来の意味……」
「別に深い意味はないけど、えへへ。一応、願いを込めて」
「………」

義勇は指で柄をなぞる。柄のある手拭いもいいもんだと思った。

「一緒になるから」
「……え?」
「お前と。必ず」
「………うん!」

琴音は嬉しそうに義勇の肩にもたれかかった。

「いつか、子が出来たら……俺が名付ける」
「え」
「『冨岡おこげ』は可哀想だ」
「ーーっ!!そんな名前にするわけ無いでしょー!」

琴音はプンプンと怒り、義勇は穏やかに笑う。明日死ぬかもしれない生活をしている二人に、少しだけ未来の花が咲いた。


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