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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第18章 お気に入り


部屋で刀の手入れをしていると、琴音が起きた気配がした。
戸を開けて廊下を覗くと、部屋着に着替えた琴音が自室から出てきた。

「あ、おはようございます、義勇さん」
「おはよう」
「お水借りるね」
「ああ」

琴音はとことこと歩いて目の前を通り過ぎていく。その様子を見て、ああ、体が痛いんだなと義勇は思う。

千代が作ってくれた朝餉を義勇の部屋で共に食べると、義勇はお茶を飲みながら琴音に聞いた。

「腹か。腰か」
「なんのこと?」
「いいから、ちゃんと言え」
「……どっちも」

とぼけようとする琴音だったが、義勇が逃してくれそうにないため、仕方なく体の痛いところを言った。

「でも別に、凄く痛い訳じゃないから。普通にしてれば全然なんともないし。心配しないで」
「今日は鍛錬するなよ」
「いや、そんな。こんなことくらいで鍛錬止めれないよ。怪我したわけじゃないし」
「怪我だろう」
「大袈裟だなぁ。心配しすぎ」

琴音はケラケラと笑う。
だが、義勇は心配そうな顔をしている。女子のことはよくわからない。しかも自分が傷を負わせたようなものなのだ。

「大丈夫、へっちゃらだよ、本当に」
「お前はなかなか本当のことを言わない」
「ありゃ。信用ないね、私」

琴音は食器を重ねて持とうとする。

「俺がやる」

義勇は琴音から膳を奪った。

「え、いいよ。私が持ってくから」
「やる」

義勇は下膳なんていつもしないのに。そんなことをしたら千代に何か勘ぐられるかもしれない。
琴音は焦るが、義勇は食器を渡さない。琴音が心配していることがわかったのか義勇が口を開く。

「お前がいない間、俺も自分で持っていってた。別になんとも思われない」
「え、そうなの?」
「甘え過ぎだと、前に言われたから……」

義勇は少し口を尖らせた。
その様子が可愛くて、琴音はクスッと笑った。

「そっか。偉いねぇ」
「………別に」
「お利口さん。じゃあ、お任せしようかな」
「ああ」

義勇は膳を持って部屋を出ていった。


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