第18章 お気に入り
翌朝義勇が目覚めると、琴音が自分の胸元にくっついて寝ていた。
義勇は微笑みを浮かべてしばらくその様子を見つめる。優しく髪を撫でると、琴音は嬉しそうに笑った。いつまでもこうしていたいのはやまやまなのだが、そうもいかない。
義勇は自分の寝間着を掴んでいる琴音の手を外そうとする。が、「んー……」と仰向けに寝返りをうった琴音はまだ右手を離さない。相変わらずの寝起きの悪さに苦笑いをしながら、右手もそっと離させようとするが「やぁー…」と嫌そうな顔をする。
「琴音、離してくれないと起きられない」
「………やぁだ…いっしょ…」
義勇が起きたことで、琴音も多少起き始めてきたようだ。夢と現の狭間にいながらそんな可愛いことを言ってくる彼女に、義勇は朝から胸がほっこりとした。
「朝だぞ」
「むぅ……」
「じきに千代が来る。見られてもいいのか?」
「…………やだ」
「なら起きろ」
琴音は半覚醒状態で、しぶしぶ義勇の着物から手を離した。
義勇は身体を起こして伸びをする。よく寝られたようで、疲れは取れていた。義勇から離れた琴音は、またすやすやと寝息をたてはじめた。
「ねぼすけ娘」
義勇は琴音にちゅっと口付けをして布団から出る。自室へと戻り、身支度を始めた。
……今日は仕事来るだろうか
外を見ると天気が良かった。
指令が入らなければ非番となるが、それはまだわからない。非番でもその空いた時間を鍛錬に使ったりするので、柱はなかなかゆっくりすることがない。
しかし、今日は琴音とどこかへ出かけたりしてのんびりと過したいな、と義勇は思った。