第16章 一緒に
義勇は湯に浸かりながら、今夜は共に過ごせるのだろうか、と考えていた。
どちらも任務終わり。緊急指令が入らなければ明日も休みだ。
ここまですれ違ってきたが、やっと少しのんびりできるかもしれない。
……のんびり、だけで済むだろうか
義勇は湯船で前髪を掻き上げた。少し彼の頬が染まっているのは、お湯の暖かさのせいだけではない。
義勇も二十一の健全な男だ。好いた娘が側に居て、抱きたいと思わないわけがない。しかし、彼女がどう思っているのかがわからない。無理強いはしなくない。
あれこれ悩みながら、義勇は風呂から上がった。
部屋に戻るとき、琴音が自室からおずおずと顔を出した。
「……冨岡、おかえりなさい」
「ああ。お前もな」
「あの、私、玄関から記憶がなくて……」
「玄関で倒れていて、千代が部屋に運んだようだ」
「ひぇぇ……!やっぱり!千代さんにお礼言わなきゃ!」
「もう帰った」
「そっかぁ。今度言うね」
「ああ」
「私も、お湯借りていい?」
「ああ」
琴音は着替えを持って風呂へ向かった。その間に義勇は千代が作ってくれた晩御飯を温めた。
義勇の部屋で一緒に晩御飯を食べる。
「一緒に食べるの久しぶりだね」
「鮭大根のとき以来、かな?」
「千代さんのご飯、本当に美味しい。幸せ!」
義勇は食べながら喋らないので、琴音ばかりが喋っている。にこにこと楽しそうに食べる彼女を見ながら、義勇も嬉しそうに黙々と食事をする。穏やかな空気の中、二人は幸せを感じた。
食べ終わると琴音が片付けをする。鼻歌交じりで食器を洗っていく彼女の手付きは慣れたもので、しっかり家事をやってきていたのだなと義勇は思った。
「お茶でも飲む?」
やることもないのに台所についてきていた義勇に、琴音が聞く。
「飲む」
「じゃあ準備して持っていくね」
琴音はお湯を沸かし、急須や茶葉を探した。
「わ、いいお茶。使っていいのかな。お客様用かな…わかんないや……」
そんなことをブツブツ言いながらキョロキョロしている琴音が可愛くて堪らない。義勇は思わず後ろから抱きしめた。