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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第3章 戦いの先に


走り去る少女の手を掴んで止めたかった。

やめろ!
行くな!
死ぬぞ!

そう叫びたいが、声が出ない。


……俺はまた何もできないのか


悔しさに手をぎりっと握りしめる。
そこでふと気付いた。
先程まで全く力が入らなかったのに、手が少し動く。彼女が飲ませてくれた薬が、少しずつ効果を出してきているのか。

先程触れた、彼女の柔らかな唇を思い出す。
己のよりだいぶ小さなその口は、鈍った感覚の中でも暖かさを感じさせた。

「死ぬなよ……、夜月」

義勇は小さく呟く。
感覚を研ぎ澄まして、鬼との戦闘に耳を澄ました。



「誰だお前」

ひょろりと手足の長い鬼は、ギロリと琴音を睨みつけた。

「誰だろうね」
「さっきの奴はどこだ」
「さあね」

大したことない鬼だと思っていたが、思いの外沢山人を食った鬼のようだ。禍々しい気配が鬼を包んでいる。

夜明けまで、まだだいぶある。
二人で生き残るためには倒すしかない。
琴音は義勇が身を潜めている木から鬼を遠ざけるように走って移動をする。

「お前、ちっこいな。食うところがないぜ」
「失礼な!」

鬼が追いかけながら、口から緑色の毒液を吐き出してきた。毒液は鉄砲水のように直線で琴音に向かってくる。

――これか!

琴音はひらりと躱して避ける。
毒液は地に落ちた後、ジュゥゥ…と音を立てて気化し始めた。琴音はその水蒸気を吸わないようにすぐさま離れる。

――長い戦闘になると、あちこちでこの毒霧が立ち込めて動けなくなる。急げ!

琴音は避けた勢いそのままに、鬼に突っ込んでいった。

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