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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第16章 一緒に


昼頃、二晩徹夜の任務を終えた琴音がよろよろになって煉獄家に帰ると、玄関に槇寿郎が顔を出した。

「おかえり、琴音」
「師範、只今戻りました」

力なく笑って挨拶をする琴音。
柱になっても琴音は槇寿郎を師範と呼ぶ。

「お前に来客だ。湯を浴びたら客間に来い」
「来客?」
「ああ。眠いだろうがお前は寝ると起きないからな。寝る前に会うんだ」
「わかりました」

風呂で何度か寝そうになりながら、目を閉じないように頑張って身体を清め、着替えをする。

客間へ行き、声をかけて戸を開けた。部屋の中で槇寿郎に向かって座っていたのは、琴音のよく知った人物だった。

「あれ、冨岡…?」

ややぼんやりしながら声をかける琴音。なんで、という顔をしている。

「こら、琴音。客人に対して失礼だろう。ちゃんとしなさい」

槇寿郎に注意をされて、琴音は慌てて姿勢を正した。部屋に入って義勇に挨拶をする。

「失礼いたしました。この度はご訪問を賜り、ありがとうございます。お待たせしてしまい申し訳ございません」

手を付いて頭を下げると、義勇もペコリと頭を下げた。

「冨岡殿、本日はなんのご用向でしょうか」
「琴音。冨岡殿は、お前を連れて帰りたいそうだ」
「………え?」

琴音は驚いて師を見る。
その後、表情を変えずに座っている義勇へと目線を戻す。

「お前の拠点変更の依頼を持ってきた。どうする?行くか?琴音」
「どうする、と言われましても……」

現在、炎と水を混合させる鍛錬を槇寿郎に付き合ってもらっているが、義勇の家に行けばそれも出来なくなる。琴音の呼吸の基本は炎なので、全てをわかっている槇寿郎と鍛錬するのが一番やりやすい。

無論、鍛錬だけではなく、義勇の家に行くということは生活面でも全てが変わる。この激務の中、やっていけるのだろうか。

困った表情を浮かべる琴音を、二人の男が見つめる。槇寿郎が口を開いた。

「お前たち、ずっと会えていないのだろう。冨岡から聞いた」
「師範……」
「共に暮せば、忙しくても会える。時間がずれている生活だとしても、せめて少しだけでもすれ違うことくらいは出来るんだ」

確かに、とも思った。今はすれ違うことすら出来ていないのだ。

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