第15章 星空の下で
「おやすみなさい」と声をかけて、琴音は部屋に戻った。
帰る予定だったため、押し入れにしまった布団を引っ張り出して敷いた。
羽織と上着を脱いで布団の上に座ると、今更ながらに猛烈に恥ずかしさが込み上げてきた。
………ちょ、ちょっとまって。いや、え?なんかとてつもなく凄いことが起きたんじゃないの???
口元を押さえながら、耳まで真っ赤にする琴音。動悸が凄まじい。血が毛細血管にまでこれでもかという程に巡り、自分の心臓の音がうるさ過ぎて他に何も聞こえない。何もかもが自分では制御できない感じがした。
思い起こせば、今回の出来事に関してきっかけを作ったのは紛れもなく自分だ。屋根の上に義勇を連れて行って、想いを告げた。
いやしかし、まさかこんなことになるとは。
……えっと、私は、冨岡の恋人になったの?そうなの?そういうことなの?
恋愛初心者の琴音には、それすらわからない。ただただ、何度も求められて交わした口付けを思い出す。
……ひぃぃぃぃ!!は、恥ずかしい!!
思い出すとまた飛び跳ねる心臓。枕を抱えて布団に飛び込んだ。何故屋根の上であれ程冷静に彼と対峙出来ていたのか、今となっては完全に謎である。しばらく布団の上で悶絶していた。
「はぁ……疲れた」
琴音は赤い顔のまま、枕をぎゅっと抱きしめて布団に転がる。夕方まで大暴れの稽古をしていたのだから当然だ。体も心もくたくただった。
とりあえず、寝よう。あれこれ考えても、わからないものはわからない。そのうちわかっていくこともあるだろう。
そう思ったら途端に眠気に吸い込まれていった。琴音はなんだかふわふわとする温かい夢をみた気がした。