第15章 星空の下で
「冨岡」
緊張を含んだ琴音の声に、義勇は琴音を見た。二人の視線が合う。
琴音は、ふうと息を吸って、続きを口にした。
「私、冨岡が好き」
義勇が大きく目を見開いた。
琴音も目を逸らさずに、しっかりと義勇を見ている。この人、こんなに真ん丸な目になることもあるんだな、などと頭の中はとても冷静だった。
この時、緊張感はあるものの、不思議と気恥ずかしさや躊躇は全くなかった。ただ伝えておきたいということのみで琴音は想いを口にした。
義勇は驚きで頭が真っ白になった。
いやまさかここでそんなことを言われるなど、微塵も思っていなかったから。
今まで女に想いを告げられることは幾度もあったが、驚くことも胸が弾むこともなく、淡々と断ってきた。
しかし、今回は別だ。とてつもなく別だ。
元々喋ることが苦手で、何と答えればいいのかわからない。とにかく驚き過ぎて固まってしまった。
「辛いときに私の側にいてくれてありがとう」
琴音は想いを紡ぎ続ける。
「気にかけて、見守ってくれてありがとう」
もし明日死んでも後悔のないように。
「優しい冨岡が、大好きだよ」
死んだら星になって、今度は自分がずっと義勇のことを見守っていよう。そう思った。
義勇は両手で琴音の肩をガシッと掴んで自分の方を向かせた。
「え、冨岡?」
「お前の言う、それは……」
義勇は肩を掴んだまま、琴音にぐっと顔を近付ける。
「こういうことをされても良いと言う、好き、か?」
唇が触れそうな距離で接近を止めた義勇が琴音に問う。
琴音は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐにふっと柔らかに微笑んだ。
「もちろんそうだ……、っ!」
琴音が言い終わる前に塞がれる唇。それほどまでに義勇はパンク寸前。これまで彼女へ抱いてきた想いが一気に溢れ、余裕がなかった。
義勇からの早急な口付けに驚き戸惑ったが、琴音も目を閉じて彼の口付けを受け入れた。
次第に、肩に置かれていた義勇の手が琴音の後頭部と背中へと移動する。二人の身体の密着度があがって、長い口付けになっていく。