第14章 修行
義勇は驚いた。
琴音の使う水の呼吸は、義勇のそれにほとんど遜色がない。もちろん不慣れなことによる甘い部分もあるが、速さと威力に関してはもはや何も言うことがない。しっかりと技が身についていることがわかった。
油断をすると一気に斬られる。義勇も本気を出す。
「打ち潮!」
「ねじれ渦」
二人の木刀が、ガキィッと合わさる。
力勝負にならないように、琴音は刀を素早く滑らせて体勢を変えた。
「昇り炎天!」
突然炎の技を出す琴音。あ、という顔をした。
「こら」
「ごめん、つい!」
苦笑いをして、義勇から離れる琴音。二つの呼吸の切り替えもスムーズに出来ている。
……こいつ、強くなった
義勇は少しの焦燥感をもつ。
果たして、自分にこれが出来るだろうか。二つの呼吸を使って戦うなど並大抵のことではない。しかも真逆の性質を持つ呼吸だ。
目の前で木刀を振るう少女の才覚と、その血の滲むような努力を想った。
しかし、己とて水の最高位の称号を持つ者だ。習得後数日の者に負けるわけにはいかない。
義勇は琴音の甘い部分を突いて彼女をふっ飛ばし、「足の運びが単純すぎる」と助言をした。
二人の鍛錬は夜まで続いた。
琴音は義勇の家で湯を借り、痣だらけとなった体を癒やす。今日の稽古の反省点を思い起こしていく。最後まで丁寧に指導をしてくれた義勇に感謝をした。
ここから先は一人で高めていく領域だ。頑張ろうと自分に言い聞かせて風呂から上がった。