第14章 修行
琴音は煉獄家で槇寿郎と話していた。
「ふむ、順調のようだな」
「はい。概ね覚わったと思います」
「ここからの昇華が大切だ」
「わかっております。それは今後の自己鍛錬でやっていきます」
「では、お館様にもそのように伝えておく」
「お願い致します」
琴音は立ち上がった。
「琴音」
「はい」
「これから先は、冨岡の所に住んでもいいのだぞ」
「………はい?」
「お前たちは恋仲なのだろう?」
「は?……はぁぁぁ?!」
琴音は驚いて仰け反った。
「なっ、なんで?!なんでそうなるのですか!!」
「違うのか?」
「違いますよ!!!」
「三日四日帰ってこないから、てっきりそういう事なのかと思っていた」
「修行してたんですよ!!!」
琴音は顔を赤くして否定する。そんな彼女の様子を見て、槇寿郎は柔らかく微笑んだ。
「だいぶ元気が出てきたな、琴音」
「え」
「冨岡のおかげか」
「…………」
「お前が不安定なのはわかっていた。しかし、俺にはどうすることも出来なかった。……いや、それは言い訳だな。俺にも余裕がなかったんだ。いい大人が、お前にいろいろ抱え込ませていた。すまない」
「師範……」
「冨岡に託してよかった」
「……………」
「あいつといるとお前は落ち着くんだ、おそらくな」
「そうでしょうか」
琴音は少し考える。確かに今回は、泣かせてもらって休ませてもらって稽古をつけてもらってと、義勇に多くを助けてもらった。
「御礼を言っておきます」
「うむ。酒でも持っていけ」
「はい」
そう言って琴音は微笑んだ。
槇寿郎に上等な酒を持たされて、琴音は義勇の家へと向かう。この先、こんなに一緒に居られることはもうないんだなぁと、義勇と同じくどこか寂しい想いを抱えていた。
夕方頃に、義勇の家に着いた。
義勇は仕事で居なかったので勝手にお邪魔する。
しばらく道場で刀を振っていると、義勇の気配がして刀を止めた。
「おかえりなさい。お邪魔しています」
「ああ」
義勇は木刀を持った。
「修行の仕上げだ。かかってこい」
そう言われて琴音も刀を収めて木刀を取る。
「はい!お願いします!」
「来い」
前回の柱稽古とは違う。水の呼吸同士の戦いがはじまった。