第14章 修行
翌日から琴音の修行が始まった。
修行開始と同時に琴音がまず思ったことは、なんて使いやすいんだ、ということだった。
これが、適合した呼吸……
自分でも驚くほどに技を出しやすい。
琴音は力強い水流を纏って技を出していく。直線的な炎と曲線的な水の違いに少し手こずるものの、なんと一日で全ての技を問題なく出せるようになった。
出来るようになると、また生まれてくる新たな課題と疑問点。仕事終わりの義勇に質問し、それを踏まえてまた鍛錬をしていく。
そこから三日間、琴音は煉獄家へ帰らずに、義勇の家で過ごした。というか、ほぼ寝ていないと言うのが正解で、疲れ切って倒れるまで稽古しているのだ。
体調が万全じゃない中でそんな無茶をするな、と思いながらも、彼女から発せられる気迫がどんどん高まって当初より格段に元気が出てきているため、義勇は放置してそれを見守る。
琴音は翌日昼、一度煉獄家に帰った。
「現状を報告してくるね」と言って去っていく彼女を見て、修行の終わりが近いのだと義勇はわかった。
ほんの数日で水の呼吸を覚えてしまった琴音。凄い才能だと感心しながら、義勇はなんだか悔しくもある。
そして、もっとゆっくり修行すればいいのに、まだまだここに居ればいいのに、と彼女の修行終了を寂しく思う自分に気が付いた。
あっという間だった。
もう彼女がここで滞在することもない。たまに来てくれたとしても、お互い多忙な中、一体それはいつになるのか。
道場の隅で丸まって寝ていたり、うまくいかなくて一人拗ねていたり、美しく座って瞑想していたりする彼女を、もう見ることはできないのだ。
まだ琴音は喪服のままだ。その姿に、どうしても壁や距離を感じてしまう。
義勇は小さくため息をついた。