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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第14章 修行


義勇が手桶を持って部屋に戻ると、琴音は寝ていた。彼女は寝ながらまだひっくひっくと泣いている。義勇は手拭いを濡らし、目からおでこを覆うように乗せてやった。

……想像以上の泣き虫だな。余程堪えていたのか……

布団を首元まで上げてやると、彼女はまた「杏寿郎さん」と呟いた。

お兄ちゃんだの、杏寿郎さんだの、いつも違う男を呼ぶ琴音に義勇は不機嫌になる。

「いつになったら俺の名を呼ぶ」

仕返しとばかりに、義勇は手拭いの上から軽くおでこを弾いた。



その日琴音はぼんやりとしながらも、軽く食事をとり、義勇宅に泊まった。というか、眠気が強すぎて帰宅ができなかった。初めて男の家に外泊をした。そんなことに戸惑いを覚えることもできないままに、琴音は眠り続けた。

義勇は夜間は仕事に出ており、明け方になって帰宅した。彼女の部屋をそっと覗き、その存在を確認する。こちらは初めて女子を泊めた側。家に自分以外の人間が寝ていることになんだかそわそわした。眠れるかなと心配したが、仕事の疲れもあって義勇も案外直ぐに眠ることが出来た。



睡眠時間が短めの義勇は、琴音と同じくらいに起きた。

「おはよぉ……」

目を擦りながら朝の挨拶をする琴音を見て、幸せを感じる。

寝間着姿の義勇を見て、ぼんやりとしていた琴音の頭が目覚め始め、外泊したという事実にだんだんと顔が赤くなっていく。

「あ…、昨日はどうも……」
「…………体調はどうだ」
「悪くない、デス」

どうにも気恥ずかしい。共寝明けでもあるまいし、と思いながらも琴音はどぎまぎとしてしまう。義勇はいつも通りの無表情だ。

「朝餉、食えそうか」
「うーん……」
「食え」
「一択ならなんで聞いたのよ」

「後で呼びに来る」

そう言って義勇は部屋から出ていった。
琴音はのそりと布団から出て支度を始める。持ってきていた稽古着へと着替えた。

義勇が用意してくれていた鏡台の前で髪を梳かし、髪を束ねてきゅっと縛る。稽古だ。気合を入れねば。邪念は振り払え。頬をペチペチと叩いた。


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