第2章 出会い
「大ッ嫌い!冨岡!」
竹内に包帯を巻き直してもらいながらプンスカしている琴音。頬には冷湿布が貼られている。
「まあ、お前も悪いところはあったんだぞ。ぶん殴ったのはあいつが悪いけどな。先に手ぇ出したのもお前だ」
「そうかもしれないけど」
「あのな、琴音。冨岡のあの羽織はな……」
竹内は琴音に義勇の羽織のことを話した。彼も直接本人から聞いたわけではないが、同期の間では皆が知っている話だった。
義勇の左右で柄の違う羽織が、亡き姉と親友の形見であることを知って琴音は黙る。
「隊を辞めろって言ったのも、お前を心配しての言葉なんだよ」
「そんなの、そう言ってくれなきゃわかるわけないじゃん」
「言葉の足らない奴なんだ」
「足らないにもほどがあるでしょ」
「悪い奴じゃないんだよ」
「どうだか」
琴音はため息を一つついた。そして、じんじんと痛む頬に触れた。
「…………嫌な奴。でも、……強い」
「ああ。階級はもう乙(きのと)だ」
「えっ、上から二つ目?凄っ」
「凄いよな」
「……負けない」
琴音は手を握りしめる。
負けたくない。絶対に超えてやる。
「私も強くなる」
義勇が琴音にもたらした最初の感情は、『闘争心』だった。
「ほっぺた、明日腫れるぞ」
「ちぇ……」
「ははは、かたっぽだけおたふくみたいになるんだろうな」
「嫌だなぁ」
頭の包帯を巻き終えた竹内が笑う。
「竹内、ありがと。あと、心配かけてごめん」
「別にいいよ」
「冨岡は嫌いだけど……今度会ったら、羽織のことはちゃんとごめんなさいするよ」
「うん、そうしてやれ」
素直に謝る琴音。竹内は傷に響かないように琴音の頭を撫でてやった。
撫でられたのが嬉しいのか、琴音は年相応に笑ってみせた。