第2章 出会い
「帰る」
掴みかかられて着崩れた隊服を直しながら、義勇が言った。
「私、あんたより強くなるから」
琴音は義勇にそう告げる。
「あんたには負けない。あんたが私に言ったこと、絶対に撤回させてやる」
「……………」
「なんか言いなよ」
「……………」
琴音を見たまま何も言わない義勇に彼女の苛々が募る。
「なにさ、変な羽織着ちゃって。馬鹿みたい」
からかうように琴音がそう言うと、義勇はカッと目を見開き、一瞬のうちに間合いを詰め、琴音を殴った。
その流れるような一連の動きが速すぎて、琴音は何が起きたかわからなかった。気が付いたらふっ飛ばされていて、頬が猛烈に痛かった。あまりのことに竹内も止められなかった。
「おい!冨岡!何してんだ!女だぞ!!」
慌てて琴音の側に這い寄る竹内。琴音は痛みで蹲っている。衝撃で頭の傷が開いたようで、包帯にじんわりと血がにじんだ。
義勇もはっと我に返り、琴音を殴った己の拳を眉をひそめながら見つめた。
「この羽織は……」
義勇はそれだけを小さな声で呟くと、力が抜けたように手を降ろし「殴って悪かった」と一言告げて部屋から出て去っていった。
とまあ、こんな感じで、二人の出会いは最悪なものだった……