第13章 慟哭
翌日、琴音は義勇の家を訪れた。
槇寿郎か産屋敷が連絡をしていたのだろう、義勇は驚きもせずに彼女を出迎えた。
客間に通されると、琴音は深々と頭を下げた。
「冨岡義勇様。水の呼吸をご教授願いたく参りました。ご多忙中恐縮ではございますが、ご指南賜りたくお願い申し上げます」
「……………」
「……………」
「………教えるのは構わない」
「ありがとうございます」
義勇は不服そうに琴音を見つめる。
「構わないが……」
「?なにか」
「……口調」
「いや、今は冨岡さんは先生ですので」
「……………」
「嫌なんですね」
こくりと頷く義勇。
「そう言われましても」
「いつも通りにしろ」
「ですが」
「……教えて欲しくないのか」
そう言われて琴音も若干イラッとする。
「別に、村田様に教わっても良いのですよ?彼も水なので」
「……………」
「なんなら竈門殿でも」
挑発する様に告げると、より拗ねた顔をする義勇。
「俺が教えると言った。前に」
「…………」
「だが、そこまで壁を作られると、教えにくい」
「…………」
「…………」
「…………」
「……普通に話してくれ」
義勇が珍しく喋り、あまりにもしょんぼりとした姿を見せるので、仕方なく琴音が折れる。
「……はぁ、わかったよ」
彼女がやや呆れながらそう言うと、義勇は僅かに目を大きくした。
「よろしくお願いします、冨岡。忙しいところ、ごめんね」
「問題ない」
「型を教えてくれれば勝手に鍛錬するから」
「ああ」
義勇から安心したような気配がする。
……冨岡って、結構我儘だよね
そんな義勇を見ながら琴音はそう思った。
思い通りにならないとすぐに拗ね、譲りたくないところは譲らない我儘なところがある気がする。
琴音も他の人ならわりとすぐに相手の望みを聞き入れるのに、どうも相手が義勇だとイラッとしたり意地悪して挑発をしてしまう。
お互い末っ子同士だからかな、と思った。