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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第13章 慟哭


「だから鬼に立ち向かうために、この先は新しい事を試さねばならない。まだ誰もしたことのない、未知の世界へと技をひろげるのだ」
「新しい…こと……?」
「そうだ。お前は適合していない呼吸をここまで極めた。炎柱になるにふさわしいところまでしっかりと築き上げた。努力という、ただそれだけのもので、だ」
「…………」
「そこに、本来適した呼吸を併せ持てば、炎の威力も増すのではないかと考えている」
「そうでしょうか」
「わからない。派生とはまた違うものだ。言うなれば混合だ」
「混合……」
「これは、お前にしか出来ない。お前は新たな形での炎柱となるのだ」

槇寿郎はじっと琴音を見つめた。

「新たな武器を身に着け、鬼に挑め、琴音」
「師範」
「柱となり、鬼を倒せ」
「…………」

「そして……お前は決して死ぬな」

そう言い聞かせる槇寿郎は、かつての優しい顔をしていた。

「お前は俺の娘のようなものだ。俺からもう子どもを奪わないでくれ」
「師範……」
「炎の呼吸と、杏寿郎の遺志を継いでくれるか」

琴音は姿勢を正す。

「謹んで、お受けいたします」 

深々と頭を下げた。

「しかしながら、やはり私は刀が水色の半端者。他に炎柱に相応しき者が現れましたら、即座にその者に譲ることをお許しください」
「相分かった」
「炎柱の羽織。そちらも私には分不相応にございます。どうか再び煉獄家から炎柱が生まれる時までこちらで保管願います」
「うむ」

槇寿郎は了承した。

「どちらにしても、この羽織はお前には大きすぎる」
「まあ、そうですね」
「引きずってしまうな」
「失礼な!引きずりはしません。手は出ないかもしれませんが……」

「時に、琴音。刀は腰に挿したままの状態で抜けるようになったのか?」
「抜けるに決まってるでしょう!それ、本当に小さい時の話ですよ」
「腕が短か過ぎて、左手も使わないと抜けなかったからな」

くくっと小さく笑う槇寿郎。からかわれて少し拗ねる琴音も、この懐かしい感覚に心が温まる。槇寿郎の笑うところなどずっと見ていなかったから。

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