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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第13章 慟哭


数日後、道場で琴音が鍛錬をしていると、槇寿郎が現れた。その手に酒瓶はなかった。

「師範!」

琴音は鍛錬している手を止めて、礼をとった。

「琴音」
「はっ」
「炎の型、全てやってみせよ」
「………え」
「聞こえなかったのか」
「いえ」

槇寿郎は床に座り、じっと琴音を見つめる。何故そんなことを言われるのかわからずに琴音は少しの戸惑いをみせるが、一呼吸ついた後に木刀を振り始める。

壱ノ型から順番に、丁寧に力強く技を放つ。槇寿郎に稽古をみてもらうなんていつぶりだろうか。『そうだ!いいぞ、琴音!』そう言って微笑んでくれた師の姿を思い出す。もう相当前のことだ。

捌ノ型まで技を出し、そこで止める琴音。木刀を下ろした。

「玖ノ型はどうした」
「…………」
「教えたはずだ」
「私は、捌までしか使いません」

炎の呼吸、玖ノ型は奥義であり、その名も「煉獄」。煉獄家に伝わる技で、本来なら琴音は知り得ないものである。煉獄家以外の炎の剣士は捌までしか使わない。

「いいから、やってみろ」
「………ですが」
「出来るだろう」

師の命令は絶対だ。
琴音は庭に下りて木刀を構えた。木刀を握る手に力を込める。玖ノ型は渾身の力を込めた斬撃だ。


心を燃やせ
もっと熱く
もっともっと強く
全てが燃えて燃え尽きるほどに

彼女の周りに旋風が巻き起こる。
強き想いと共に、心に封じ込めていたものも溢れ出して来る。

どうして死んじゃったの

もっと一緒に居たかった
もっと一緒に強くなりたかった

もっと もっと もっと!


「炎の呼吸奥義!玖ノ型!煉獄!!!」

琴音は大きな炎を纏って、力一杯木刀を振った。とてつもない衝撃波と爆音が響き渡る。

槇寿郎は、しっかりとその姿を見つめていた。


「……っ、はぁっ……はぁっ……」

息の上がった琴音は、それでもよろけることなく道場に上がり、槇寿郎の前に座った。


「琴音」
「はい」
「見事だ」
「ありがとうございます」

琴音深く頭を下げた。


「お前は今日から炎柱となれ」


思いがけないことを言われて、琴音は驚いて言葉を失った。


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