第13章 慟哭
「炭治郎くん、君のせいじゃない」
「うぅ……、うわぁぁ……煉獄さん……」
「生きててくれてありがとう。君たちが今生きていることこそが、杏寿郎さんの願いだったんだよ」
「琴音さん……俺……俺は……」
「自分が死ねばよかったなんて絶対に思わないで。それこそ杏寿郎さんが悲しむ。何も、誰にも、引け目を感じることはないよ」
震えながら涙をこぼす少年の背を、琴音は優しく撫で擦る。
「よしよし」
「ううっ……っく……」
「胸を張って生きろ、って言われなかった?」
「……言われ、ました」
「ね?いつも言うのよ、杏寿郎さん。たぶんずっと自分にそう言い聞かせてきたんだと思う。辛いときとかに、自分で自分を奮い立たせてきたんだよ」
「胸を張って……生きる……。心を燃やして……、胸を…張って……」
「そう」
炭治郎は繰り返し呟きながら、袖でぐっと涙を拭いた。
腕の中で彼が顔を上げたのがわかったので、琴音はそっと身体を離した。
琴音はまた炭治郎の顔を手拭いで拭いてやる。泣いてしまったことを気にしているのか、炭治郎はバツが悪そうに眉毛を下げている。
「すみません、琴音さん。ご迷惑を」
「長男なのに?」
「……はい」
琴音は少し笑って彼の頭を撫でた。
「迷惑なんてちっともかけてない。言ったでしょ?いつでも甘えなさいって。長男も泣きたいときはあるよね。大丈夫、大丈夫だから」
炭治郎も、少しホッとしたような顔で照れくさそうに微笑んだ。琴音から手拭いを借りて、涙を拭いた。
「怪我してるのに、ここまで来てくれてありがとう」
「いえ。お伝えできて、よかったです」
「しかと、お聞きいたしました」
「はい」
琴音と炭治郎は、互いに頭を下げ合った。