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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第13章 慟哭


炭治郎は、必死に涙を堪えて、杏寿郎からの遺言を語る。

「千寿郎さんには、自分の心のまま、正しいと思う道を進んでほしい、と」
「……ありがとう……ございます」
「お父上には、体を大切にしてほしい、と」
「はい。伝えておきます」

「琴音さん」
「はい」
「琴音さんには……、少し黙った後に、幸せになってほしい、とおっしゃいました」
「幸せ……ですか」
「はい。あと、無理はするな、と」
「それはまた、……随分と難しいことを言われたものですね」

琴音は太腿の上に置いた手をぎゅっと握った。

「お話をしながらとても穏やかな顔をされていて、………こんなことを申し上げてよいかわかりませんが、煉獄さんから……恋慕の匂いがしました」
「そうですか……」

炭治郎は俯く。

「ありがとうございます」

琴音は炭治郎に深々と頭を下げた。千寿郎も頭を下げる。

「いえ、そんな。力及ばず申し訳ありません」

炭治郎もバッと頭を抱え下げた。
自分の弱さに打ちひしがれている様子が解る。千寿郎が日の呼吸の手がかりになるかもしれないと『歴代炎柱ノ書』を取りに行っている間に、琴音は炭治郎に話しかけた。

「炭治郎くん」
「……はい」
「大丈夫?」
「え……」
「あのね、杏寿郎さんが死んだのは、決して君のせいではないんだよ」
「……琴音さん」
「杏寿郎さんも言ったんじゃない?『気にするな』って」
「で、でも……俺にもっと力があったら……。俺たちを守るために、煉獄さんはっ!俺が弱かったせいで……っ」

炭治郎は涙を堪えきれなくなり、彼の赤みを帯びた大きな目から涙がぽろぽろと流れ出た。

「柱ならそれが当たり前」

琴音は手拭いで彼の涙を拭き、小さくうずくまるその身体をそっと抱きしめてやる。

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