第13章 慟哭
葬儀の日。
義勇は初めて煉獄家を訪れた。
一般隊士の参列はなし。希望者を募ると多すぎてしまうことと、柱が皆ここへ来ているため仕事が手薄になるからだ。
いつもの羽織ではなく、黒の羽織を着ている義勇。棺の側に立つ琴音を見つけた。
彼女も黒い羽織を着ており、結紐も義勇にもらったものではなく、黒。その目に涙はなく、静かに立っている。
義勇に気付いた琴音が、彼に目を向けた。義勇はスッと頭を下げ、琴音も深く頭を下げる。
義勇は甘露寺が縋り付いて泣いている棺に近付き、机に置かれていた花を一輪棺に入れた。
見事な最期だったと聞いた。
恐れることも逃げることもせずに、一切の迷いなく己の全力を出して立ち向かった。
そして、柱として申し分のない働きをし、後輩に想いを託して散っていった……
やはりこの男は、とてつもなく凄い男だった。
義勇は心から尊敬をした。
……だが、煉獄
夜月をどうするんだ
お前の前でしか泣けない夜月は、やはりこの場においても泣いていないぞ
杏寿郎の顔を見ながら静かに問う。
返事はない。
見回してみるが、部屋の中に煉獄槇寿郎の姿はなく、杏寿郎にそっくりな少年が庭石にうなだれながらちょこんと座り、大粒の涙を流していた。
葬儀の段取りはどうやら琴音が取り仕切っているようで、表情の薄い中で、たまに動いては隠と話をしている。
柱たちが帰って、出棺や火葬の時になっても琴音は泣くことはなく、泣きじゃくる千寿郎を宥めていた。
煉獄家にとって、琴音にとって、闇夜に包まれたかのような辛い辛い日々がしばらくの間続いた。
杏寿郎の死からニ週間ほど経った頃、弔問客が現れた。
「え、炭治郎くんが……?」
私用で外出していた琴音は、千寿郎に呼ばれ、帰宅してすぐに客間へと向かう。
「竈門殿。この度はご弔問を賜り、杏寿郎さんも喜んでいることと思います」
琴音は炭治郎に丁寧に挨拶をし、杏寿郎の最期に居合わせた炭治郎から詳しい話を聞く。共に話を聞く千寿郎は涙が止まらない。琴音は千寿郎を撫でながら炭治郎の話をしっかりと聞いた。