第12章 年下の男の子
善逸と伊之助も、このままでいいとは思っていない。それでも、鍛錬に来ることが出来ないでいた。そんな二人のもどかしい気持ちに寄り添いつつ、琴音はそれぞれの話を熱心に聞いてやる。
琴音と話した二人は、稽古場をそっと覗く。炭治郎に誘われるが、やはり逃げ出してしまった。
炭治郎が瓢箪を割れるようになった頃、焦りが頂点に達した二人は琴音としのぶの声掛けによって本格的に鍛錬を開始し始めた。三人で鍛錬に励み、共に汗を流す。
「よかったね」
そんな彼らを屋根の上から微笑みながら見ている琴音。
「一緒に頑張れる同期がいるのがどんなに幸せか。それがわかったかなぁ」
「甘やかし過ぎだと言っただろう」
「あはは」
「稽古はつけてやらないのか」
「貴方がつけてさしあげれば?水柱様」
いつの間にか隣りに立つ義勇に笑いかける琴音。
「炭治郎くんはあなたの弟弟子でしょ?」
「………」
「私は水の呼吸を使えないから。雷もね。伊之助くんの呼吸なんて未知の世界だよ」
「異なる呼吸でも稽古は付けられる」
「そうだけど」
二人が話していると、鍛錬中の善逸が泣き出した。
「うわぁぁーん!もうやだ出来ない!俺、向いてないんだ!剣士向いてない!」
善逸は伊之助に「うるせー!いいからやれ!紋逸!」と殴られて更にぎゃあぎゃあと泣いた。炭治郎が励ましの言葉をかけるが、善逸は座り込んでしまった。
そんな彼らの様子を見て、琴音は少し笑って屋根の上から飛び降りて彼らの元へ行った。
……全く。放っとけばいいだろう
義勇は不機嫌になりつつ、屋根の上に座って彼らの様子を見ていた。
「善逸くん」
「琴音ちゃぁーん!」
「ほら、泣かないの」
「出来ないもん!出来る気しないもん!俺、雷の型も一個しか出来ないし、才能ないんだ……」
「うるせーっつってんだろ!甘えんな!このへなちょこ!」
「黙れこの猪!お前に俺の気持ちはわかんねぇんだよ!」
「よせ!二人共!喧嘩するな!」
裏庭は稽古どころではなくなり、琴音は苦笑いをする。
琴音は、膝を抱えてえぐえぐと泣く善逸の頭を撫でながら優しく声をかけた。
「善逸くん、いいこと教えてあげる」
そう言って、彼女は彼らの前で自分の日輪刀を抜いてみせた。