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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第11章 那田蜘蛛山


まずい…、可愛過ぎる……

義勇は、恐怖で縋りついてきた琴音を思い出す。もっと恐ろしい鬼をバサバサと斬りまくっている強い少女が、あんな小さな蜘蛛に怯えるという意外性。側に自分しかいかなったとはいえ、己を頼り、身を寄せてきた琴音。
義勇の男心をくすぐるには十分すぎる程だった。

つい、彼女の方へと手が伸びる。
しかしその手は彼女に届く前に重力に引かれて下ろされた。流石に前回のことを思い、許可なく彼女に触れることは出来なかった。
義勇とてもう子どもではない。落ち着いてさえいれば、ちゃんと自制するところは自制する。


『琴音にも嫌われますよ』

しのぶの言葉が蘇る。
嫌われてはいない。その確信はある。

しかし。
嫌われていないのなら、一体この子から自分はどう思われているのだろうか。

好かれているのだろうか。


かつて杏寿郎は義勇に言った。『どう思っているのか、聞いてみなければわからないだろう』と。そして彼は自分の想いを迷いなく彼女に告げ、彼女からの返事も受け入れている。


俺は……


上手く言葉が紡げない義勇。
作業をする琴音の背中を、黙って見つめていた。


すると、そんな義勇の思考を吹き飛ばすかのように突然琴音が叫んだ。

「冨岡っ!!」
「っ!?どうした」

義勇はびっくりするが、それは彼の表情にはほとんど現れない。
彼女の目線は試験管に向けられたままだ。また蜘蛛が出たのか?と義勇は思う。

「ねえ、しのぶちゃん、帰ってきてる?!」
「……知らない。姿は見ていない」
「凄い、これ……凄いよ!いや、ちょっと待って、そっかそっか………」

琴音は椅子から立ち上がって試験管を見ている。義勇にはよくわからないが、なにやら興奮している。

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