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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第11章 那田蜘蛛山


琴音は穏やかに笑っているが、義勇はやや憮然としている。

「私が優しくすることで頑張れるなら、私はいくらでも優しくするよ」
「…………」
「でもその優しさも、嘘っぱちかもね」
「………?」
「だって、結局全部自分の為だもん。薬の効果を知りたいの、私は。……その為に善逸くんに実験台になってもらってるようなものだよ。酷い話だね」

琴音は苦笑いを浮かべる。記録を取る手がピタリと止まった。
黙って話を聞いていた義勇が口を開く。

「お前の優しさは、嘘ではない」
「……え?」
「お前が今頑張っているのは、これから更に多くの隊士を救おうとしているからだ。自分の為などではない」
「………うん、ありがと」

少し疲れた顔で琴音は微笑んだ。
義勇も僅かに満足そうな顔をした。

「羽織はどうした」
「ん?ああ、貸したの」
「………?」
「村田が鬼に隊服溶かされちゃってさ。真っ裸だったから貸してあげたの。身体が溶けちゃわなくて本当良かったよ」

琴音はケラケラと笑うが、義勇は激しく動揺した。

こいつ、見たのか?男の裸を……
いや、治療とかで見慣れているのかもしれないが、それにしても、平然としすぎてないか?

「今度会った時にでも、返してもらうよ」

義勇は、男の素肌に乗った物など琴音に着てほしくないと思った。今すぐに俺が新品を買ってやるからそれを着ろと言いたかった。
自分の独占欲に驚く。


「……鬼の、毒が付いているかもしれない。着る前によく洗え」

せめてもの抵抗を、義勇は口にした。



琴音はまた手を動かし始めた。
手元を覗き込むが、書き込まれていくものは義勇にはサッパリわからない。


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