第11章 那田蜘蛛山
「手足の縮みがあるね。血鬼止め、飲めるかな」
琴音はゴソゴソと薬袋をあさり、小さな包を取り出す。
「諦めずにちゃんと呼吸で止めてたんだね!よく頑張ったね!偉いよ!今からお薬、飲むよ。もう大丈夫だからね」
少年はぼんやりとしながらも琴音を見ており、その目から一筋の涙が溢れた。琴音は少年の首裏に腕を入れ、頭を少し高くした。
口を開かせて散薬を半分入れる。水筒から水を口に注ぐと、少年はこくんと喉を動かして飲み込んだ。
「うん、偉い。上手。もう一回頑張ろう」
残りの半分を飲ませると、袖で口元を拭いてやり、また寝かせていく。
「体温が低いね。保温のため、治療が終わったら体を布で巻こうか。用意して」
隠に指示を出す琴音。
少年の隊服を脱がせて、傷の手当もしていく。その間もずっと笑顔を絶やさずに前向きな言葉をかけ続ける。治療が終わって布でまきまきにされるまで、少年はえぐえぐと泣いていた。
「琴音、ここは任せていいですか」
「はい。大丈夫です。欲を申せば、カナヲちゃんをお借りしたいですが」
「いいですよ。カナヲ、ここで琴音の手伝いをしてください」
「ありがとうございます」
しのぶはふわりと飛んで山の中へ消えていった。
琴音は蜘蛛人間にビビり倒しながらも、カナヲや隠と協力して治療をしていく。
治療が終わると、負傷者の搬送作業をカナヲと隠に任せ、他に怪我人がいないか山の中を探す琴音。
そこへ「夜月〜……」と弱々しい声がかかる。えっ、と振り返ると全裸の村田がいた。
「うわっ!え?村田?!やだちょっと、なんで服着てないの!」
「ううぅ……鬼に溶かされたんだよぉ」
「溶かされた?」
「変な繭に入れられたんだよぉ」
「……あんた、ここに何しに来たのよ」
琴音は少々呆れ気味だが、村田が生きていたことに安堵する。とりあえず、自分の羽織を脱いで彼にバサリと被せてやった。