第22章 呪い合い、殺し合い、
すると今度は天使の口が来栖の手の甲に現れる。
「私を捜していたということは、私の術式を知っているね?」
これには3人とも頷く。
「術式の消滅。封印を含む結界術も例外ではないから、私達は結界を好きに出入りできる。元々いたのは東京第2だったが、そこは海のせいか泳者よりも呪霊が多くてね。こちらに移動したまでのこと」
「何故だ?呪霊の方が夜を避ければ行動パターンは読み易いだろ」
「私の目的は受肉した泳者の一掃だ。彼らの多くは受肉の過程で器の自我を殺し沈めている。故意にしろ、無意識にしろね」
羂索の誘いに乗って死滅回游に参加している過去の術師はかなりの数に上るだろう。
それは即ち同じだけの現代人が自我を殺されているということ。
「あってはならないことだ。神の理に反する」
「神?」
「私の信条に簡潔に名前を付けただけだ。聞き流していい」
「あの、天使さんは受肉ではないんですか?」
なずながおずおずと尋ねる。
1000年前の術師なら肉体はとうの昔に朽ちているはず。
現に来栖の身体を使っている状態だ。
器の自我を殺さず受肉する、と言われてまず思い至るのは虎杖と宿儺の関係だが、それは虎杖にその適性があったからであり、適性の高い人間が器になる確率なんてそうそう高くないだろう。
「私自身は華と共生という手段を取っている。華の自我を殺さず、肉体の主導権も華にある」
「じゃああまり私のことペラペラ話さないでくれます?」
来栖は膨れっ面になって天使の口をひと睨みしている。
「……そういうこともできるんですね」
その様子になずなは驚くばかりだった。