第22章 呪い合い、殺し合い、
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「恵」
その声に伏黒が顔を上げると、補助監督に車椅子を押されている津美紀が見えた。
ここは埼玉県内の病院だ。
津美紀は目覚めた後、身体に異常がないか諸々の検査を受けていた。
結果はすべて異常なし。
ただ、ずっと寝たきりの状態だったため筋力が落ちており、今は歩くためのリハビリ中だ。
「何年ぶり……?私はあんまり時間経ってる感じしないんだけど……」
「大体1年と7ヶ月」
「そっかー、そりゃ歩くのも難しいわけだ」
苦笑する津美紀は伏黒の記憶にある姉そのもの。
良かった。
無為転変で脳を弄られたから何らかの記憶障害があってもおかしくなかったが、それも大丈夫そうだ。
内心喜んでいてもそれを素直に表に出せないのはもはや伏黒の性分だった。
「……死滅回游のこと聞いたか?」
「うん、五条さんのことも。昔から2人が何か大変な仕事をしてるのは分かってたけど……」
「何も心配いらない。俺と俺の仲間が何とかできる。なんなら津美紀はもうちょい寝とけ」
ぶっきらぼうな物言いに津美紀がくすくすと笑う。
「……ふふ、相変わらず減らず口」
ずっと寝顔しか見ていなかったから、生き生きとした表情の変化にひどく懐かしさを感じる。
そうだ、
俺は津美紀を助けるために……
ゆっくりと意識が浮上する。