第22章 呪い合い、殺し合い、
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―みんなソレがお母さんじゃないことは分かっていた―
瓦礫やゴミが散乱する廃屋で、自分と同じ年頃の少女達と列に並びソレから食べ物を受け取る。
巨大な人の顔を幾重にも積み重ねたような体から6本の腕が生えた怪物。
人間とはかけ離れたその姿に恐怖は感じなかった。
おとなしく従っていれば何もされないし、そこにいればかろうじて毎日食い繋ぐことができたから。
大きな手にスプーンを持ったソレは割れた椀によそったご飯を少女達に渡すと頭から生えたもう一対の手で自らの頬を引っ張り、笑顔を作る。
ご飯を受け取ったらいつも腰掛けている捨てられたマットレスに座り、黙って食べるのがここでの生活だった。
半分腐っているような到底料理とはいえない茶色の食べ物を口に入れるとゴリッと硬い感触がして、何かと思って吐き出すと小さなネジが出てきた。
無感動にネジを眺め、ソレに見られないように隠しながらこっそり捨てる。
他の子も自分と同じように一言も話さずに食事している。
みんなソレがお母さんなんかじゃないことは分かっていた。
でも泣いたりうるさくした子はいつの間にかいなくなっていたから、次第に誰も何も言わなくなった。
何も変わらない光景がこの後大きく変わるなんて思いもしていなかった。