第22章 呪い合い、殺し合い、
「……渡辺、アイツと喧嘩でもしたの?」
来栖の険悪な様子を見て虎杖がなずなに耳打ちする。
平和主義でおとなしい彼女が他人の怒りを買うというのがイマイチ想像できなかったのだ。
「喧嘩はしてないけど……お互いに信用してない……」
「えっ、そうなの?」
口を尖らせるなずなに目を丸くする。
「だ、だっていきなり現れて気絶してる恵くんを渡せって……」
そう言ってなずなは来栖が現れた時のことを思い出す。
戦闘の直後、伏黒から他の泳者が寄ってくるかもと忠告されていたこともあり、余計に警戒感が強まっていた。
だが、よく考えてみれば襲撃目的なら声をかける前に奇襲すれば済む話だ。
もし本当に善意で手を差し伸べてくれたのならかなり失礼な態度を取ってしまった。
「あれ、伏黒のこと名前で呼んでんの?いつの間に?」
「!」
「おっ、君も気づいたか!なずな嬢はここまで実に紆余曲折を経て……」
「高羽さんっ、へ、へへ変なこと言わないでください!!」
途端に真っ赤になるなずな。
高羽がなおも話を続けようとするので口止めするのに必死だ。
しかし、なずなでは高羽のトークを止めることはできず、やれなずなから告白しただの、名前呼びを提案したら初々しく照れていただの、伏黒も最終的に名前呼びに応じていただのと虎杖の知らない情報をすべて明かしてしまう。