第22章 呪い合い、殺し合い、
「彼のこと、ちゃんと考えてます?こんな所をずっと彷徨うつもりですか?私だったら真っ先に休ませてあげるのに」
「っ!」
「どうなんですか?」
「……私は……」
答えに窮しているなずなの背中でわずかに伏黒が呻き声を漏らす。
痛みを堪えるような苦しさの混じる声を聞いたなずなはビクリと肩を揺らした。
「わ、私だって恵くんを一刻も早く休ませたいです。でもあなたを信用していいか、判断する材料が少なすぎる」
もしこの状況で騙されたら?
多人数と戦いになったら?
私だけじゃ恵くんを守りきれないかもしれない。
だから……!
「彼と私の24時間の休息を保証してください。術師や呪霊との戦闘がない連続24時間の休息です。それが保証されなければ恵くんは渡しません。これは縛りです」
これ以上は譲らないという気迫を感じた来栖はなずなを一瞥した後、肩を竦めて嘆息した。
「はぁ、私からすればあなたの方が信用なりませんけど……分かりました、約束します。ただし2人は運べませんので、あなたは地上を走ってついてきてくださいね」
「それで構いません。恵くんをお願いします」
来栖は伏黒の制服を掴み、ふわりと浮かび上がって飛び立ち、なずなは黙って来栖を追いかけて走り出す。
本当は嫌だった。
見ず知らずの来栖に彼を預けることが。
でもそんなわがままで貴重な休息のチャンスを失う訳にはいかない。
来栖を見失わないよう気をつけながらもなずなは唇を噛んでいた。