第22章 呪い合い、殺し合い、
なずなは差し出された手を凝視するばかりですぐに返事することができなかった。
天使……
天元様は東京第2結界にいると言っていた。
だからパンダ先輩があちらに行っている。
じゃあこの人はなんで自分を天使だと言うの?
天使を騙る偽者?
それとも天使は結界を行き来できるの?
それにもし……
もしもこの人が敵だったら……?
助けるフリをして私達の命を狙っていたら?
そもそも天元様は天使を味方だとは言っていなかった。
天使は天使で何か目的があって死滅回游に参加している。その目的が恵くんだったとしたら?
「……恵くんは渡せません」
「見た限り負傷しているようですが、どこか行くあてはあるのですか?」
「そ、それは……」
「この先に私が寝泊まりしているホテルがあります。他の泳者はいませんし、電気も水道も使える。休息にはもってこいの場所ですよ」
来栖の提案になずなはなおも渋った。
休息場所を求めているのは事実だが、彼女の言っていることが真実かどうか見極める術がない。
泳者がいないというのは嘘で本当は敵が待ち伏せしている可能性がどうしても頭の中にチラつく。
「……じゃ、じゃあそのホテルに案内してください。彼は私が運びます」
「聞き分けのない人ですね。あなたが運んでたんじゃ着くのが遅くなります。どう考えても空を飛べる私の方が早いです」
来栖は丁寧な口調のまま語気を強めてなずなに迫る。
しかし、なずなは伏黒を渡す決断ができなかった。