第22章 呪い合い、殺し合い、
「恵くん、怪我した所は痛くない?」
「ああ……」
「喉が渇いたとかはない?」
「大、丈夫……」
休息できる場所を求めて彷徨い歩きながら、なずなは伏黒に声を掛け続ける。
返事をする伏黒の掠れた声はどんどん小さくなっており、肩にかかる重さも重くなってきた。
これはなずなが疲労しているのではなく、伏黒が意識を失いかけているのだ。
どうしよう、どうしよう、どうしよう……!
早く恵くんを休ませてあげないといけないのに。
傷の手当だってちゃんとできてないのに。
横になって休める場所……
ベッドがあって傷の手当もできる所がいいけど病院にはきっと人がいる。
もし運良くいなかったとしても同じように怪我をした術師がいつ来るか分からない。
私はまだ戦えるけど、こんな状態の恵くんを連れて大人数を相手にするのは危険すぎる。
ベッドじゃなくてもソファとかでいい。
とにかく横になれて、人があまり寄り付かなさそうな場所……
しかし思考は堂々巡りして、休める場所には人が集まるという結論になってしまう。
なんで私は自分にしか反転術式を使えないんだろう。家入先生や乙骨先輩みたいに他の人にも使えたら、恵くんをこんな苦しませなくて済むのに……
「恵くん、寝ないで、お願い……!」
「……寝てねぇ……よ……」
募る不安から涙声になってしまうなずなに囁くような細い声で答えた伏黒はその直後に意識を失った。
「恵くん!恵くん!」
返事をしなくなった伏黒を一旦下ろし、すぐに背負い直す。
もうこうなったら一番近い病院かクリニックに向かおう。
もし泳者が襲ってきたら私が全部追い返す。
恵くんは私が守る……!