第6章 真昼の逃避行
「ここから歩道に飛び降りる。私が着地したら合図するから、野薔薇ちゃんも降りてきて。できれば背中から落ちてきてくれると助かる」
「はぁ!?」
ちょっと何言ってるか分からない。
「舌噛むといけないので、口を閉じていてください。……いきますよ」
なずなはそう言うや否や勢いをつけて歩道橋の柵を飛び越えてしまった。
少しの間、ふわりと無重力の感覚に包まれ、すぐに地面が迫ってくる。
ダンと鈍い音を立てて無事着地。
「大丈夫ですか?」
「は、はい」
すぐに女性を下ろして、まだ上にいる野薔薇に合図する。
「野薔薇ちゃんもいいよー!」
数秒も経たずに下の歩道からなずなの声がした。
追いかけてきた不良達はまだ見えないが、足音はもう迫ってきていて、時間がないことは分かった。
こんな場所から飛び降りるなんて初めてだが、なずなが女性を抱えながらでもできたのだ。
大したことない……!
そう自分に言い聞かせて、野薔薇も柵を飛び越えた。
なずなに言われた通り背中を下にしているが、地面が見えないので、とてつもなく怖い。
これ、軽い臨死体験かも……
口から魂が出るんじゃないかと思ったが、そんなことはなく、野薔薇はなずなに受け止められた。
「ナイス飛び降り!ちゃんとキャッチしやすかったよ」
「もうやりたくないわ……」