第6章 真昼の逃避行
「あの人達、追いかけてきた……!」
角を曲がるときに横目で後ろを確認したなずながさらにスピードを上げた。
手を引かれている2人はあまりの速さにされるがままになっている。
「はっや!ちょっとなずな!速すぎ!!」
身体強化の術式のことは知ってた。
知ってたけど!
2人の手を引いてこのスピード!?
足がもつれそう。
「ご、ごめん!でももうちょっと我慢して」
追いかけてきている不良達との距離は縮まってはいないが、離れてもいない。
足の速さだけで振り切るのは難しい。
でも人目の多い場所まで出られれば不良もそこまで強く出られないだろう。
走る先に歩道橋が見えた。
あそこなら少し距離を稼げるかもしれない。
「野薔薇ちゃんと女性の方、歩道橋渡ります。階段あるから気をつけて」
さすがに階段で足をもつれさせたら危ない。
なずなは少しスピードを落としつつ、2人の手を引いて歩道橋を上っていく。
「アイツら追いついてきてるわよ!」
野薔薇が階段を上りきって後ろを見ると不良達が歩道橋のすぐ下まで迫っていた。
3人は急いで歩道橋を渡る。
今度は下り階段だ。
「ちょっと失礼します。……よっと」
「あ、あの……?」
「なずな何やってんのよ」
助けた女性を横抱きにしたなずなが歩道橋の手すりに片足をかけている。