第22章 呪い合い、殺し合い、
「い、今、あっちの方から爆発みたいな音しませんでしたか!?」
なずなが前を行く高羽を呼び止める。
音のした方向に目を凝らすとうっすら白煙が上がっているような……
「お、花火でも上がったかな?た〜まや〜」
「こんなところで誰が上げるんですか!」
「ツッコミのキレが増してきたな、なずな嬢」
「言ってる場合じゃないです。きっとあそこで誰か戦ってます」
ここに入ってから呪霊1体しか祓っていないのであまり実感が湧かないが、死滅回游は殺し合いの儀式だ。
いつ、どこで戦闘になってもおかしくない。
もし、あそこで戦っているのが2人の内のどちらかだったら……
「コガネ、伏黒くんと虎杖くんの情報を出して」
「ほいほいっと」
コガネが出した情報では2人ともアイコンも得点も変化はない。
でも胸騒ぎがする。
「あっちに伏黒少年がいると?」
「分からないです。もしかしたら違う人かも……」
ここからでは戦っている者の呪力の気配までは感知できない。
それが分かる範囲まで近づけば向こうにも気づかれる可能性は高いし、もしそれが過去の術師だったりしたら戦闘になることは必至、高羽を巻き込むことになる。
だがこれまでの会話や高羽の人柄から考えると彼は術師、つまり人間と戦ったことがない。
巻き込めば助けてくれた恩を仇で返すようなものだ。
どうしよう、と悩み始めたところに再び爆発音が耳に入ってきた。
「また……!」
今度ははっきりと聞こえ、しかも上がってきたのは黒煙。
確実に先ほどよりも大きな爆発だ。
相変わらず2人のアイコンに変化はないが、胸騒ぎは大きくなるばかり。
こうなっては居ても立っても居られなかった。
「2人のどっちかかも。行ってみましょう……!」
「ガッテン承知の介だぜ!」
2人が爆発のあった方向へ足を向けた直後、2体のコガネが鐘の音と共に全く同じことを告げた。
「泳者による死滅回游へのルール追加が行われました!〈総則〉10 、泳者は他泳者に任意の得点を譲渡することができる」
「!」
「お?」
2人の内のどっちかだ、
どっちかが日車さんを説得できたんだ!