第22章 呪い合い、殺し合い、
確かに伏黒もここに入った直後から妙だと思っていた。
殺し合いの儀式が行われているにしては静かすぎる、どこからも戦闘の音がしなかった。
そこは彼の言う通りだ。
「早い段階で強者だけが残り……死滅回游が膠着すると?」
「既に、さ。少なくともここ東京第1はね。加えて結界に侵入した際の“転送”、人を散らす目的もあるんだろうが、一番は現代人術師の早期二次覚醒を促すためだろう」
死を間近に感じた時に爆発的に成長する術師は多い。
羂索は呪物の解放とともに術式を所持した非術師の脳の構造を弄っており、そうした者達をより早期に覚醒させるためにランダムで上空の地点に転送するよう仕組んだ。
「この転送で死ぬ奴もいる。本当に泳者の呪力を利用したいのなら、より多くの術師により長くダラダラと戦ってほしいはずだ。総則の“永続”のような建前は本当の計画の隠れ蓑」
レジィは目を細める。
「これは確信だ。強者だけが残った回游に羂索が爆弾を落とし、死滅回游は役割を終える。……その爆弾が何かは分からない」
物理的な爆弾なのか、はたまた呪術的な何かなのか、
それがいつ落とされるのかも不明。
遠くない未来であることは間違いないが、今この時に頭上で爆発してもおかしくないのだ。
「だから備えとして強い仲間を募り、点を貯めておく」
レジィの言葉を完全に信用する訳ではないが、伏黒が疑問に思っていたことを含め、辻褄は合っていた。
「……いくつか聞きたい」
そう切り出した伏黒は背後の麗美を指差す。
「コイツがそんなに強いとは思えない」
不意打ちでの襲撃でも伏黒を仕留められなかったのだ。
レジィが言うような“強い仲間”にはそぐわないように思える。
……もしかすると戦闘面とは別に能力があるのかもしれないが。
「その女は適当な理由で泳者をここに招く囮役さ、女の方が警戒されにくいしね」
そういうわけでもなかったらしい。