第22章 呪い合い、殺し合い、
伏黒は通りかかった駅の駅名を確認して前を歩く麗美を呼び止めた。
「……おい」
「何」
「池袋を通って新宿に向かうつもりならやめろ。この辺は物資が豊富だ。泳者との遭遇率が上がる」
ここは要町駅、さっきより池袋に近づいている。
日車がいる新宿に行くには少し遠回りだ。
真っ直ぐ新宿に向かった方が余計な戦い……時間のロスは避けられる。
だが麗美は歩くのをやめず、少しだけ振り向き横目で伏黒を一瞥して指を2本立てる。
「ここを通る理由は2つ、道が分かりやすい。近くに私の拠点がある。シャワーくらい浴びさせて。昨日からろくに休めてないの」
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麗美について行くとタイル張りのやや古いマンションに辿り着いた。
彼女がシャワーを浴びる間、1階で待っていればいいかと立ち止まった伏黒に対して麗美が不満を露わにする。
「ちょっと、なんでそこで止まるのよ?」
「別に俺がついて行く必要はねぇだろ」
「私がシャワー浴びてる間に誰か襲ってきたらどうすんの!」
「その時は自分でどうにかしろ。逃げるくらいはできるだろ」
「アンタは私の騎士なのよ!それに日車を探してるんでしょ?私が殺されたらアンタこそ困るんじゃない?」
麗美の挑発的な視線に小さく舌打ちした伏黒は麗美の方へと足を向け、階段を上り始めた彼女について行った。