第22章 呪い合い、殺し合い、
「コガネ、ルール追加だ」
日車の目の前に端がカールした髭を持つコガネが現れる。
「泳者と泳者の点の受け渡しを可能にしてくれ。もちろんこれは総則8の“変動”に含まれるものとする」
「承認されました。総則10 泳者は他泳者に任意の得点を譲渡することができる」
聞いていた虎杖もホッと胸を撫で下ろした。
「コガネ、俺の1点を虎杖へ」
「かしこまりました」
「!」
「日車寛見から1点が譲渡されました」
今度は虎杖のコガネが現れる。
「これでお互い19日間は術式を剥奪されることはない」
そう言って席を立った日車は真っ直ぐ出口へ歩いていく。
「達者でな」
「日車!これからどうするつもりだ?アンタさえ良ければ俺達を手伝ってくれないか?」
そう提案した虎杖の方には振り向かず、日車は静かに告げる。
「……余った2点は、東京に来る前、俺が殺した裁判官と検事のものだ」
大江の二審の判決が言い渡され、初めて術式を行使したあの時。
自分が犯したのは間違いなく殺人である。
「結界が開けたら自首でもするかな。それまでは自分が何をすべきか考える。それに、」
劇場の分厚い扉に手を掛け、ゆっくりと開く。
「君といると、ますます自分を嫌いになりそうだ」
でもそれは決して虎杖のせいではなく、
「……すまない、責めたわけじゃないんだ」
彼と対峙して自分の醜さを思い知ったから。
「またな」
そうして日車は静かに劇場から去っていった。