第22章 呪い合い、殺し合い、
何故だ虎杖悠仁、
何故罪を認めた……!
ジャッジマンから提出された証拠の情報は開封前から術師本人、つまり日車には共有される。
提出された証拠は彼の中に巣食う悪魔、両面宿儺について。
渋谷での大量殺戮は宿儺が行ったこと。
オマエは殺してない!
何故だ!
何故!!
真っ直ぐこちらを見る虎杖の瞳を直視できず、日車の手から処刑人の剣が消えた。
直後に虎杖の拳が日車の鳩尾に叩き込まれる。
殴り飛ばされ、ゲホッと咳き込む日車に虎杖は困惑していた。
「おい!」
「刑法39条1項だ」
「?」
「弁識能力と制御能力、いずれかが欠けていると心神喪失となる。渋谷での君は宿儺に肉体を乗っ取られていた」
「なんで宿儺のこと……」
「ジャッジマンから提出された証拠だ。あの時の君には制御能力がなかった。それに自発的に制御能力を放棄したわけでもない」
「つまり無罪だ。君に罪はない」
弁護士である日車にそう言われても、虎杖の罪の意識が薄れることはなかった。
「……でもやっぱり俺のせいだ」
あの時、脹相に敗れなければ、
意識を失わなければ、
指を飲まされることはなかった。
「俺が、弱いせいだ」
「……そうか」
「日車、なんでさっき術式を解いたんだ?」
「初心に還った」
もし虎杖を処刑人の剣で斬っていたら……
罪のない人間を自らの手で裁くことになり、日車自身が刑事裁判で感じていた「おかしさ」を自ら体現する形になっていた。
日車は起き上がり、1つ客席を持ってくる。
「虎杖、オマエのような弱さを持つ人間がまだまだいるのかもしれん」
「?」
「服を着ろ、そして座れ」
虎杖も日車に倣って客席を持ってくる。
「100点やる」
虎杖が脱ぎ捨てた服を着る間、日車は床に視線を落としていた。
「……虎杖、」
「ん?」
「自分の意志で人を殺めたことはあるか?」
「……あるよ」
「……そうか。最悪の気分だったろう」
日車の脳裏には初めて殺めた検事と裁判官が頭を潰された状態で足元に倒れている光景があった。