第22章 呪い合い、殺し合い、
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控訴審(二審)
有罪 無期懲役
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限られた予算と人数で動かなければならない弁護側に対し、検察は税金とマンパワーを投入して証拠を上げる。
それはいい、そういう仕組みだ。
だが、二審で検察側から新規の証拠は提出されず、「行方不明者の犯行と疑う理由はない」と無茶な事実認定が下され、判決が覆った。
それは明らかにおかしい。
大江は犯行時刻に被害者の自宅にいなかったことが証明できているし、NPOの行方不明者が事件に関与していないか調べるべきだというのに何もせず……
残る三審の最高裁は狭き門、上告はほぼ門前払いだ。
まともに審理されることすら難しい。
この裁判は初めから有罪ありきの―……
大江の大きく見開かれて血走った目とかち合う。
それは飲酒運転の危険運転致傷で有罪判決を受けたあの少年と同じ目だ。
何故、私をその目で見る。
「この判決に不服がある場合は本日を含めて15日以内に上告申立書を提出してください」
裁判官の言葉に日車はいつの間にか手に収まっていたガベルで机を叩いていた。
「日車さん……?」
「全員戻れ」
日車から呪力が立ち昇り、背後に黒い天秤の式神が現れる。
はたしてこの法廷にいる者達がそれを目視することができたかどうか。
だがそんなことはどうでもいい。
「やり直しだ」
それが日車が初めて術式を行使した瞬間だった。
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