第22章 呪い合い、殺し合い、
その決意は今も揺らがない。
大江周りの調査に奔走しながら面会を重ね、証拠と証言を集められるだけ集めた。
母子が殺された強盗殺人事件。
大江は強盗についても否認、盗まれた物が何かも知らなかった。
職質から逃げた大江を追った警察も彼の部屋から盗難物を見つけられなかった。
更に清水に調べさせたNPO法人の職員の中には犯行直後から行方不明になっている人物がいた。
決定的なのは、遺体から想定した犯行時刻にコンビニの防犯カメラに大江が映っていたことだ。
それら全てを裁判所へ提出した。
そして公判を経て、判決が言い渡される。
「主文、被告人は無罪」
傍聴席が騒めく。
大江自身も驚きに固まっていた。
「本当に勝っちゃった……」
「まだだ。すぐ控訴してくる」
目を丸くする清水の隣で日車は寝不足の目を擦りながら呻いた。
その直後から金を積んで裏取引をしただの悪徳弁護士だのと憶測での新聞記事やネットニュースが飛び交ったが、日車は意に介さなかった。
判決後に面会した大江は日車を見るなり深々と頭を下げた。
「日車先生、ありがとうございます」
「先生は勘弁してくれ。それに気が早い。まだ二審がある」
「そうじゃなくて」
顔を上げた大江は涙で顔をぐしゃぐしゃにしていた。
「俺を信じてくれて、ありがとう」