第22章 呪い合い、殺し合い、
実際に大江から聞いたことや調査をまとめた資料のページをめくる。
「だが彼に給料は支払われていない。お小遣いと称してお年玉をもらったり、弁当や食材の現物支給のみだ。にもかかわらず、彼は月5万円を家賃として徴収されている」
「エグぅ……」
「入居者には前科のある者も少なくないそうだ。更に拾得物である包丁の提出が遅れた理由だが」
―呼んじゃダメな決まりなんです、パトカーや救急車。近所の人の迷惑になるから―
「その団体、かなりグレーですね……?」
「あぁ、限りなくクロに近いグレーだ。ただでさえ東北は震災復興資金が流れ込んでたから運営実態の怪しいNPO法人が増えている」
日車はページを繰る手を止めて手を組んだ。
「凶器が落ちていても意外じゃない。大江がシロの可能性は十二分にある」
まだ確たる証拠はないが、つつけば色々と出てきそうなNPO法人、それに大江の普段の生活習慣などを聞いていけば自ずと明らかになってくるだろう。
「まずは団体の活動実態と税務申告、そして全入居者の素性を洗い出す。俺はとことん大江から事情を聞き出すから、清水は調査を進めてくれ。あと猫を飼えるかどうかも」
「猫!?いきなり私の負担デカくないですか!?」
すぐ外出の準備をして席を立つと不服そうな顔をした清水が慌ててついてきた。
「もー!日車さん、なんで受けたんですか、こんな案件!」
「たまにはいいだろう。楽な仕事ばかりじゃ腕が鈍る」
「たまにじゃないじゃん!!」
「思ったことがそのまま出てるぞ」
もし本当に大江が今回の事件に無関係なら、絶対に有罪にはさせない。