第22章 呪い合い、殺し合い、
「日車ぁ!やり直し、もう一回だ!!」
バシュンと音を立てて再びお互い暴力禁止の法廷の領域が現れる。
「……気づいたか」
「あ……危ねぇ、に、二審ってやつだよな」
ガベルの重圧から解放された虎杖は四つん這いで上がった息を整えた。
ジャッジマンに有罪を言い渡され罰を科された対象は、罪を認めない限り2回まで裁判のやり直しを請求できる。
ジャッジマンがこれを断ることはない。
柵に手をついて立ち上がった虎杖が人差し指を立てる。
「ほら、もう一回!」
だが通常の二審とは異なり、ジャッジマンの口から告げられた容疑の内容は先程とは全く違うものだった。
『虎杖悠仁は2018年10月31日、渋谷にて大量殺人を犯した疑いがある』
あの時の光景がおぞましい程鮮やかに虎杖の脳裏に蘇ってくる。
細切れにされ、血溜まりに倒れた姉妹、
特級呪霊との戦いに巻き込まれた人もいた。
それに渋谷の109一帯を更地にして、帳から出られずに避難していた人々を皆殺しに―……
あれは間違いなく宿儺がやったこと、
そして肉体の主導権を取り戻せず、止めることができなかった自分の責任だ。
「……あぁ、俺が殺した。これは嘘でも否定でもない」
証拠の入った封筒を持った日車は、そう自白した虎杖の目に瞠目した。
真っ直ぐ、静寂を湛える瞳、
それはかつて……
それまで静かに目を閉じていたジャッジマンが縫い留められた目を大きく開き、歯を剥き出して叫ぶ。
『有罪』『没収』『死刑』
その判決に呼応して日車の持つガベルが剣の形に変形した。