第22章 呪い合い、殺し合い、
修習59期
岩手県弁護士会所属
日車寛見 36歳
T大法学部受験
法科大学院導入前の旧司法試験など、あらゆる難関をストレートで通過。
―天才―
日車を知った凡夫は囁く。
だが、彼にとってそれらは必要な知識を入力し、出力するだけの簡単な作業だった。
彼の中で最も光る原石は―……
呪術師としての才能だった。
領域がデフォルトで備わった自らの術式を解明することで結界術の基礎をも同時に習得。
結界術から逆算する形で呪力操作による強化術の勘を掴み、術式開花から12日間で一級術師と比べても遜色ないレベルまで成長。
結界侵入前に数多くの呪霊を退け、20人以上の泳者を返り討ちにするに至る。
日車はガベルを左右交互に出現させては消し、虎杖に猛攻を仕掛けた。
後退する虎杖が振りかぶった肘へガベルの柄を湾曲させて引っかけて転ばせる。
だがこの程度では虎杖もそこまでダメージは負わず、すぐに立て直してきた。
「呪力が練れなくなっているのか?」
「アンタがやったんだろ」
「没収のペナルティは一時的に術式の使用を不可能にするものだ」
それが呪力の使用不可に置き換わっている。
「察するにオマエは術式を持っていなかった。だからペナルティが“呪力の使用不可”に変わったのだろう。ちなみに没収は本来付加刑でそれ単体で科されることはない」
表情こそ崩さないが、日車は内心驚愕していた。
自分で言ってて恐ろしいよ、
何故呪力なしで俺と対等に渡り合える?
呪術師としてではなく、生来の肉体、
生物としての強度が恐ろしく高いのか……!
そう分析し、これまで戦ってきた術師を思い出す。
術師は術式が使用できなくなると基礎的な呪力操作もグダグダになることが多い。
長年の勘が鈍るのだろう。
そして完全な呪力使用不可の虎杖はそれよりも不利な状態だ。
にもかかわらずこれまで“没収”を科された術師の誰よりも強い。
並の連中なら初めの一撃で勝負は決していた。
油断すれば足をすくわれる。