第6章 真昼の逃避行
いろいろなスポーツ用品店をハシゴしてああでもない、こうでもないと厳選して買ったジャージを手に、2人はカフェに入って休憩していた。
「まったくあの女!交流会じゃ、ただじゃおかないんだから!」
野薔薇の怒りは冷めない。
それどころか沸々と再燃する勢いだ。
「まあまあ、落ち着いて」
「なずなももっと怒りなさいよ!あのドルオタゴリラ、アンタのこと投げ飛ばしたんでしょ?」
後輩、しかも女子相手になんてことしてくれてるんだとなずなの分までプリプリと怒っている。
そんな野薔薇を見て、なずなは少し困り顔で笑った。
「あれは、私が弱かったせいだし……」
もっと上手く立ち回れていたら、捕まることもなかったかもしれない。
「それに身体の使い方とか戦い方とか、いろいろ勉強になったよ」
体格が全然違うので、なずなが真似してもあまり意味がないかもしれないが、実力者の動きを見られる良い機会だった。
加えて交流会前に戦い方を見られたのは大きい。術式までは見られなかったが、対策を立てるのにも役に立つというものだ。
「吸収できるものは全部吸収して早く強くなりたいからね。私、頑張るよ」
そう言って笑うなずなの真っ直ぐな目に毒気を抜かれた野薔薇はため息をついた。
「ここまで真面目ちゃんだとは思わなかったわ……」