第6章 真昼の逃避行
うーん、どうしたものか……
見事に脇腹部分に穴が空いてしまったジャージを広げ、なずなは頭を悩ませていた。
京都校の東堂と真依の来訪で1年生3人とも負傷、特に伏黒が大怪我だったことを受けて、今日の訓練はひとまず中止となった。
明日から訓練再開なので、今日中にこの1着しかないジャージをなんとか直さなければ。
そんなことを考えていると、部屋のドアがバンと音を立てて開いた。
驚いて顔を上げると、ドアの前に私服姿の野薔薇が仁王立ちしている。
「なずな、ジャージ買いに行くわよ!」
なずながポカンとしていると、野薔薇がズンズン詰め寄ってくる。
「アンタのジャージもあの女に穴空けられたでしょ?」
「でもつぎ布あてれば、まだ使えるかなって……」
「何言ってんの。そのダサい芋ジャージから卒業するいい機会じゃない」
「芋!?」
た、確かに赤紫色のジャージはさつまいもに見えなくもないけど……
そう思いながら中学の指定ジャージを見下ろす。
「大体、あの河童の人形と毎日あれだけやりあってるんだし、あちこちすり減ってるんじゃない?」
「う、確かに……」
連日キャシィの攻撃を避けて地面を転がっているため、肘や膝の部分が薄くなってきているのは事実。
野薔薇の言う通り、穴が空くのも時間の問題だった。
「よし、決まりね」
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「ねぇ、それ持ってくの?」
私服に着替え、準備を終えたなずなの肩にある竹刀袋を指さす。
ふんわりとしたスカートを穿いているので、なんともアンバランスだった。
「うん、少しでも鬼切の呪力を使っておきたいし」
野薔薇ちゃんと一緒なら道に迷うこともないだろうし、以前に五条先生から貰った鬼切の見た目をごまかせる呪符を貼っているので、警官に呼び止められても竹刀だと言い張れる。
「……ダメかな?」
「アンタがいいなら、別にいいわよ」