第22章 呪い合い、殺し合い、
虎杖は結界に入った直後に襲ってきた術師、羽場と羽生を返り討ちにし、誘導灯を振って2人に合図を出していた甘井 凛に道案内されていた。
彼は羽場や羽生の下っ端であったが、いずれ2人に殺されていたであろうことと中学時代に“西中の虎”と呼ばれていた虎杖のことを一方的に知っていたため、こうして協力しているのだ。
「日車はここの劇場を拠点にしている。移動してなければだけど」
そう言って甘井が指差すのはガラス張りの天井が特徴的な東京芸術劇場。
「おおっ、マジで助かった!ありがとう!」
早速虎杖は劇場へ入ろうとしたのだが、
「ちょ、ちょ、待てって」
「何?」
「マジで行くのか?」
「仲間と合流したいところだけど、急ぎだからなぁ」
「俺は日車に会ったことないけど、あの羽場さんが一度コテンパンにやられたんだ」
羽場とは頭髪がプロペラになっていた男だ。
明らかに戦い慣れた動きだったのに手も足も出なかったらしい。
真剣な表情で話す甘井に虎杖も少し考えるが、ここで日車に接触しない選択はない。
甘井に心配をかけないよう笑いかける。
「じゃあ大丈夫!ヘリ頭に勝った俺も逃げるくらいはできるってことだろ」
「うっ、そーかも……」
「そんじゃなー」
足早に劇場へ入り、地下へ続く階段を降りると……
そこには少し異様な光景が広がっていた。