第22章 呪い合い、殺し合い、
「そうだ!その恋人が見つかったら、まずは下の名前で呼んでみるといい」
「!?」
「さっき言ってた“伏黒”ってのは苗字だろ?」
「で、でも……」
ノリノリな高羽の提案になずなは口ごもる。
なずなだって名前呼びに憧れがない訳ではない。
だが、どうしても心に引っかかることがあるのだ。
五条先生から名前を呼ばれる時、伏黒くんはほんの少しだけど決まって眉を寄せる。
五条先生だからなのかもしれないけれど、それだけじゃない気がする。
「いきなり名前呼びは照れくさい?」
戸惑うように目を泳がせるなずなに高羽は大仰に肩を竦める。
「男にとっちゃ、好きな子に下の名前で呼ばれるなんて昇天モノだぜ?喜ぶこと間違いなし!」
「ぁ、の、でも……伏黒くんは、自分の下の名前、あんまり好きじゃないみたいなんですけど……」
「どうして?」
「た、多分、男の子にしてはちょっと……かわいい名前、だから」
もしかすると名前をからかわれたりとか、女の子に間違われたことも1度や2度ではないかもしれない。
渋るように手を揉むなずなに高羽はチッチッチと指を振る。
「分かってないな〜、好きな子から名前を呼んでもらえるのがいいんだよ!その伏黒クンもなずな嬢から呼ばれたら、自分の名前が好きになるかもよ?」
「そ、そういうものなんでしょうか……?」
「絶対そうさ」
力強く頷く高羽になずなも勇気づけられた。
「よし!そうと決まればなずな嬢の想い人、伏黒少年探しだな。任せろ!」
「え、あの……」
いや、確かにそうだけど、第一目的は日車さんで……
しかし、一度決意した高羽は突き進むのみ。
「ムムッ、あっちの方にいる気がするぞ!」
「そ、そんなこと分かるんですか?」
「勘だよ、勘。フィーリングともいうな!」
「えぇ……」
それは“根拠がない”に等しいんじゃ……?
だが、なずなが何を言ってももう止められなかった。